［立野窯日記］2011年7月

本日、新しい窯がやってきました。

というのも、これまでずっと使っていた窯は1999年から使い始めたものなのですが
今年の松屋展に向けての焼成の最中に断線し、
一度直したもののそれから２度焼いたらもっと派手に断線。
窯屋さんに中のレンガの具合などを見てもらったところ
「これはもう寿命ですねえ。いやあここまでよく持たせたと思いますよー」
とのことでした。


なにしろ窯が小さい（たったの0.17㎥）ので
本焼きでのべ600回以上、素焼きも入れたら1000回近くは焼いています。
もうレンガは表面が焼けてめくれてかなりの面積が剥がれ落ち、
膨張と収縮を繰り返して割れたりゴロッと落っこちたりして
耐火モルタルで直しつつ使い続けてきたのですが
それも限界のようでした。


それにしても、今まで東京13回（吉祥寺1回含む）、名古屋6回、神戸3回、岡山2回と
合計24個展に出品した作品はすべてこの窯から生まれたもの。
ぼくの12年間はこの窯とともにありました。
心からの感謝を込めて窯の内も外もきれいにして
26日の夜、最後の晩はお神酒（暑いので日本酒ではなくビールにしました）を捧げて
「今まで本当にどうもありがとう」と窯に語りかけました。



ぼくも窯の前にビールとつまみで乾杯。
飲んでいるうちにこの12年間のことがいろいろと思い出されて
独り感傷的な気持ちになりました。

個展の場が一歩一歩広がってきたこと。

何回もつまづいて、でも友人やまわりの人に助けられてなんとかやってこれたこと。

いくつかの出会いと別れ。

5年前に長柄の工房へ居を移したこと。

そして今 ──。


小さな小さな窯でしたが
焼き物屋としての最初の12年間を並走してくれた、ぼくにとって大切な窯で
おかげでぼくはここまでやってこれたのだと思います。

本当にどうもありがとう。






そして、今日やってきた新しい窯。
ぼくの焼き物屋人生としては３代目の窯になります。

これまでの2.5倍ほどの体積のある窯で
面積も高さもこれまでより大きなものが作れるようになります。
ちょっと面白い仕様になっていて、いろいろ遊びがいのある窯です。
これからこの新しい窯と一緒にどんな道を歩いていくことになるのか。
少しずつ仲良くなっていけたらいいなあ、と思います。

ん？ふと12年後…と考えてみたらなんとその時ぼくは50！うひゃー！
でもきっとあっという間なんだろうな。

人間五十年
下天の中をくらぶれば
夢幻のごとくなり
一度生を受け
滅せぬ者のあるべきか…

この2日間は、仲のよい友人が集まってくれて
ひさしぶりに工房で山仕事企画を催しました。

薪割りに草刈りにバーベキューにホタル鑑賞にと、
充実した2日間となりました。

この時期、工房前の田んぼにはホタルが飛んでいます。
そうたくさんいるわけではないですが
田んぼの用水路や田んぼの中で点いたり消えたり
またふわ〜っと宙を飛んだり。

来てくれた友人にも今年はお目にかけることができました。
中には「人生初ホタルだ！」と感激してくれた人もあって
ぼくもなんだかうれしくて。


愛すべき夏の風景のひとつです。
この風景が何度も何度もずっと巡ってきますように。

先日の松屋さんでの個展で設けましたチャリティ箸置について
特別ページを立ち上げました。

中野純・箸置1000個プロジェクト

企画趣旨と、経過報告ページを作ってあります。
経過報告としては今のところまだ松屋さんでの個展のみですが。

ちなみに、ちょうど今、金沢、広島分の箸置を作っているところです。
名古屋展と金沢展、広島展の間は制作の時間が取れないような気がするので
今のうちに３個展分作っておかないと、ということで。
たかが箸置、と思われそうですが
どっこいこれがとても手間がかかるのです。
100個も200個も作るのはけっこう気が遠くなります（苦笑）。


先月の松屋さんでの個展で、１００個用意した箸置が３日で売り切れてしまったため
購入ご希望や来年の予約のお申し出をいただいているのですが
制作できる個数に限りがあるため、
この箸置につきましては会場のみの限定販売となります。
また事前の取り置きを受け付けるとすぐにいっぱいになってしまいそうなので
平等に先着順としたいと思います。





さて、閑話休題。
７月に入り、今年も半分終わったなーと思っていたら
その７月もはや半分が過ぎようとしています。
早いものですね。
箸置と同時並行で名古屋展・金沢展・広島展のための作品制作もしつつ
また他で急に入った仕事もがんばりつつ
汗をかきかき日々を過ごしております。

巷では過度の節電による熱中症が相次いでいるようですが
ぼくは今年に限らず毎年エアコンはつけずに夏を過ごしているので
いつの間にか暑さに強い体質になっていたようです。
もちろんこまめな水分補給は気をつけていますけれども。
かえって電車の冷房の効きすぎた車内に入ると具合が悪くなるので長袖が欠かせません（笑）。


みなさんも熱中症にはどうぞくれぐれもご注意を。